2006/12/20

ウェブ進化論



ウェブの世界の進歩は早い。2006年の頭に出たこの本が、同じ年の終わりにはもう既知の事しか書かれていない、古典になろうとしている。だからこの本の書評を書くのは今更という感じもするのだが、まだ読んだことのない人のために書いておくことにする。

今年に入ってから、「ウェブ2.0」という言葉をよく聞くようになった。知っている人に説明の必要はないが、「2.0」とはバージョン番号のことで、「1.0」から「2.0」へとウェブの在り方が大きく変化したということを表現した言葉である。

ここ数年間で、インターネットは確かに変化した。それは実感としてわかっている。ではどう変化したかというと、それを言葉で説明することは難しい。昔は情報の発信者と受信者、あるいはサービスの提供者と利用者がほぼ明確に区別されていて、それぞれ前者が少数、後者が多数だった。これは、1対Nのコミュニケーションである。

しかし最近はこれまで情報やサービスの受け手だった人達も情報を発信できるようになってきた。ブログの登場、mixiやMySpaceなどSNSと呼ばれるサービスの登場、CGMという消費者参加型メディアの登場などがその原因として挙げられる。これはN対Nのコミュニケーションと表現される。そしてグーグルが発展させた検索エンジンによって、あらゆる情報へ検索エンジン経由でアクセスできるようになり、知の再編成が起きてしまった。検索エンジンが情報の在り方に革命を起こしたとも言える。

本書では、これらの変化について具体例を挙げながら、シリコンバレーで暮らす著者の実感を踏まえつつ、幾分楽観的にウェブの今までとこれからについて書かれている。(悪く言えば良いことしか書かれていない。)そして本書を読めば、今ウェブの世界に何が起きているのかを知ることができるだろう。本書はウェブに精通した人には分かり切ったことしか書かれていないかもしれないし、(多くの悪い面を知っていて)著者とは違うイメージを抱いている人もいるだろう。

本書はウェブの初心者にお勧めである。実際にウェブをどう活用すれば良いのかは、良い面、悪い面を体験しつつ自分で慣れていくしかないのだが、本書はその案内役になってくれるだろう。ただし本はこちら側のもの。インターネットはあちら側のものである。だから案内役は入り口までしか案内できない。そこから先は自分の力で漕ぎ出していかなければならない。