2006/12/22

情報のさばき方

情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント
外岡 秀俊
朝日新聞社
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「ウェブ進化論」や「ウェブ人間論」の著者として、そして株式会社はてなの取締役として知られる梅田望夫さんによれば、これからのネットの世界は総表現社会であると言う。ブログという誰でも簡単にウェブ上で日記をつけたり、自分の意見を世の中に対して発言できるサービスが登場し、検索エンジンの進歩によってそれらの情報にたどり着くことができるようになった現在のネット社会をそう呼んでいる。

そんな中で、僕自身も「書けば誰かに伝わる」という思いでブログを始めた。ブログを始めて劇的に変わったのは、インプットする情報の量だった。インプットする情報が増え、毎日情報の洪水に押し流されそうな日々が続いている。どうやってこの情報をさばけば良いのかと考えていた矢先に、この本と書店で偶然出会った。

著者は朝日新聞東京本社の編集局長で、情報をさばくことにかけてはプロフェッショナルだ。著者は自身が先輩から学んだり、経験的に培った情報をさばくコツを、5つの基本原則としてまとめている。

基本原則その一、 情報力の基本はインデックス情報である。

基本原則その二、 次に重要な情報力の基本は自分の位置情報である。

基本原則その三、 膨大な情報を管理するコツは、情報管理の方法をできるだけ簡単にすることである。

基本原則その四、 情報は現場や現物にあたり、判断にあたっては常に現場におろして考える。

基本原則その五、 情報発信者の意図やメディアのからくりを知り、偏り(バイアス)を取り除く。


の5つである。

書かれていることのほとんどは、何だかの形で情報をさばく必要にある人にとっては新聞記者ならずとも役に立つ。

また、それと同時に新聞の在り方などについても勉強になる本である。

最も印象に残ったのは、第三章、1の、「わかりやすさ、正確さ、美しさ」の中で、これらの3つを正三角形の頂点に置いたとき、新聞はどこに位置するか、というところ。著者は、新聞は「わかりやすさ」に位置すると考えている。新聞は「正確さ」に位置しそうなものだが、「わかりやすさ」なのだ。これは、次のように説明できる。

新聞は大衆のためのメディアであって特定の専門家のためのものではない。そして書き手も専門家とは限らない。したがって「正確さ」は専門書に劣る。むしろ専門書なみに正確に書いても、理解できる人は限られてしまう。それならば多少「正確さ」を犠牲にしても、「わかりやすさ」を重視した方が良い。それが新聞の存在意義だ。

ということになる。

そして最後に、「IT社会と情報」というところで、これからの新聞の在り方についても述べられている。誰もが情報の発信者になれる現代にあって、新聞のようなメディアの価値はどこにあるのか。

その答は本書を読んでのお楽しみということにしておこう。

本書は新聞記者を目指す人、ブロガー、その他どんな形であれ情報と接して暮らす人の役に立つ本だと思う。