2006/12/22

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)
渡辺 千賀
朝日新聞社
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著者の渡辺千賀さんはブログ「On Off and Beyond」でも知られるアルファブロガーさん。いつもシリコンバレーから、Onは技術やベンチャー事業に関すること、Offは日常生活で感じることを、独特の視点で語ってくれる、僕の尊敬するブロガーさんの1人である。

シリコンバレーはマイクロソフト、アップル、グーグルなど、とてつもない技術者集団が誕生した場所であり、そして現在もまたそのような化け物会社に成長するかもしれない可能性を秘めたベンチャー企業が、生まれては消え、消えては生まれしている場所である。

僕はシリコンバレーに行ったことがない。だからシリコンバレーに対して具体的なイメージを持つこともできなかったし、これまで特にしようともしなかった。ところが本書を読んで、文字通り目玉が飛び出る思いだった。忙しい時に休憩のつもりで読み始めたら、止まらなくなってそのまま一気に最後まで読んでしまった。おかげでその日は徹夜の憂き目にあった。

シリコンバレーっていう場所は腕に自信のあるプログラマやソフトウェアの開発者が沢山集まった場所で、日々新しい技術が開発されていて、世界最先端の技術がそこで誕生しているのだ。そしてそんな技術者たちが一番評価されることができる、技術者天国とも言うべき場所だったのだ。

そんなシリコンバレーのライフスタイルは、次の4つに分類できるらしい。

1、雇用されず、個人で仕事を請ける「フリーランス」

2、自分の好きな場所に住むことを重視する「ライフスタイルワーカー」

3、働くときは働き、休むときは休む「チャンクワーカー」

4、複数のタイプの仕事を掛け持ちする「ポートフォリオワーカー」


どれも日本ではなかなかできそうにないワークスタイルだ。それなのに、中でもフリーランスは全体の15〜30%存在するらしい。そんな自由な生き方を選択できるなんて、まさに天国だ。僕もシリコンバレーに行こうかな、とうっとりしてしまう。

しかしながら、そこにあるのは天国ばかりではない。ある日突然解雇されたり、1箇所に留まって仕事する期間は長くて3年だったり、生活コストは馬鹿みたいに高かったりする。働いている期間の10%は職がないことを前提にしておいた方が安全だったりもする。その上、地ネズミやモグラに困らされたり、蛇に何匹も遭遇したりもするし、飼いネコがコヨーテに食べられることだってある。

そんな雨の日も含めてチャンスとリスクがいっぱいのシリコンバレーライフを楽しめそうな人、家庭菜園やアウトドアの好きな人、3度の飯よりプログラミング が好きな人、日本の技術者の待遇に不満を抱いている腕に自信のある若者は、シリコンバレーで腕試しを考えてみても良いのではなかろうか。

本書を読んで、固定概念を完膚なきまでに粉砕し、改めて自分の人生を設計し直してみると、新しい明日が見えてくる(かもしれない)。