2006/12/29

突破力! 仕事の「壁」は、こうして破れ

突破力! 仕事の「壁」は、こうして破れ
堀 紘一
PHP研究所
売り上げランキング: 4522



この本は読んでいて、まことに気持よくて爽快だった。この場合「気持よい」と「爽快」はほとんど同じ意味なのだけど、敢えて重ねよう。気持よくて爽快な本だった。

本書は外資系コンサルティングファーム「ボストンコンサルティンググループ」の代表取締役社長を勤めた堀紘一氏が、雑誌で連載していた悩み相談を加筆、修正したもの。二十代、三十代のビジネスパーソンたちの仕事や人生における「壁」を突破するための助言、激励、喝を質問のタイプ別に掲載している。

本書は「こういう場合はこうせよ」というタイプのハウツー本として読む方法もある。しかし、本書の魅力はむしろ数々の助言から著者の持つ「突破力」を学ぶことにあるだろう。著者の前ではほとんどの問題がほんの小さくて些細な問題のように見えてくる。もちろん相談している本人にとっては極めて深刻かつ重大な問題なのだけど、ほとんどの場合、今置かれている状態から最小の努力をもって抜け出そうとしているために、どうして良いかわからなくてクヨクヨ悩んでいるように見える。これは僕もしばしば陥りがちな状況だ。

しかしながら、もっと視野を広げてもっと深く考えてみれば、自と解決方法が見えてくるもののようだ。それは、時には本人にとっては英断と呼べるような決定を下さなければいけないかもしれない。でも多分、そんな英断を一度下すことができて、しかもその後もその勇気と視野の広さを保ったまま生きていくことができれば、その時の英断なんて英断と呼べる程のものではなくなっているのかもしれない。

ともかく、本書ではビジネスパーソンが一度は陥りそうな困難に対して、著者がそんなものこうすればいいんだよ、とばかりにスパスパ裁いて片付けてしまっている。しかもすごいのは、「あの時はああ言ったのに、今回は違うことを言っている」といった矛盾がないことだ。著者が自らの人生を通して築いてきた信念に従って答えているからだろう。直感的に、「この人は信頼できる」と思った。

仕事や職場での人間関係が上手くいかないのだけど、どうして良いのかわからなくて悩んでいる、という人は、一度本書を手に取ってみると良いだろう。

2006/12/27

即戦力の磨き方

即戦力の磨き方
即戦力の磨き方
posted with amazlet on 06.12.28
大前 研一
PHP研究所
売り上げランキング: 1180



世界の標準は日本よりも20年早い。日本では40代で課長、50代で部長というのが一般的な考え方だが、世界では30代で完成して経営者になることを目標に動いている。

そんな、日本人への警鐘で始まる本書の著者は、世界最大手のコンサルティングファーム、「マッキンゼー&カンパニー」を日本で成功させた人物、大前研一氏だ。大前氏の活躍はここでは紹介し切れないくらい多岐に渡るので割愛するが、本書の中でご自身の話に出てくるだけでも常人のそれを上回る。

上記の通り、世界の標準は日本人の標準よりも20年早い。このボーダレスの時代、日本の企業に勤めているからと言って日本の標準に従って動いていては、安心して生活できる保証もない。そんな時代にあって、日本人が身に付けるべき能力は次の3つであると言う。

1、語学力

2、財務力

3、問題解決力


語学力とは英語のことだ。英語は別に世界共通語ではないが、少なくともビジネス共通語ではある。英語が話せれば世界中で仕事をすることが可能であり、企業の世界進出に当たって登用されるチャンスも高い。しかし英語が話せるだけでは仕方がない。ディスカッションする力がなければビジネスの場では通用しない。ディスカッションする能力を磨いてはじめて役に立つのだ。

財務力を持つとは、自分自身の金銭的価値や資産に対して鋭くなることだ。金利の低い銀行に資産を預けて平気でいられることは財務力があるとは言わない。

問題解決力とは、受験勉強の優等生になることではない。答えがどこにあるのかわからない問題に対して、A.何が問題なのかを見出すことができ、B.問題解決のための仮説を立てることができ、C.仮説と検証を繰り返して最後に解決に結びつけることができる能力だ。Aができないのは典型的な受験優等生、Bで終わるのは思いつきを結論にするタイプ、Cまでできてはじめて問題解決力があると言う。

著者が繰り返し呼びかけるのは、この「答えのない問に答えることができる能力を身に付けよ」ということである。ビジネスの場で求められているのはまさにこの能力であり、ボーダレスの時代に世界を相手に勝負できるかどうかを決定する能力だ。

本書を読めばこの能力を磨くことや、その他の現代の後悔しない生き方に対して、その答えの一端をつかむことができるだろう。しかし本書はそれらに対する完全な答えを与えてくれるものではない。答えは常に自分で探していかなければならないものであり、そうしてこそ本当に自分を救うことができるのだから。

2006/12/24

態度が悪くてすみません―内なる「他者」との出会い

態度が悪くてすみません―内なる「他者」との出会い
内田 樹
角川書店
売り上げランキング: 64132

この本は大変面白かった。内容の濃さも面白さも、間違いなく今年読んだ本の中で第1位である。

本書は著者が「注文を受けて書いた原稿」をハードディスクの中から呼び覚ましたもので、言わば短編集になっている。そのため1つ1つの話については非常に短い。短いがその1つ1つがとても面白く、多くの新書のようにさらっと読み流すことができるほど簡単な話ではないにも関わらず一晩で読み上げてしまった。

ここが大変不思議なところで、書いてあることは難しいはずなのだけど読んでいるとその内容がすっと頭の中に入ってくる。文章の方から自分を迎えに来てくれている感じで心地良い。恐らく著者の中では1つ1つの事柄に関する知識が完璧に咀嚼されていて、その知識を使って文章を書くときにその知識を表す単語とその前後の文章、そして文章全体の流れがデコボコやツギハギなく一体感と整合性を持って構成できるのだろう。そう、天衣無縫だ。これからは内田先生の文章を 「天衣無縫の文章」と名付けよう。(勝手に名付けてすみません。)

僕が唯一何が書いてあるのかわからなかったのは第五章の、史上最強の批評装置「タカハシさん」だ。まあ、これは高橋源一郎氏の文章を読んだことがなければ わかりにくいかもしれない。(僕は不勉強ながらまったく読んだことがない。)誰か何が書いてあるのかわかったら教えて欲しい。

内田先生の文章を読んでいると、自然と先生を先生と呼びたくなってくる。もちろん僕は先生とまったく面識がない。もしもこの文章が先生の目に触れたら「誰だおまえ」って感じだろう。だから本来先生でも何でもないはずなんだけど、内田さん、とか内田氏とか呼ぶ気になれない。ましてや「たつるちゃん」と呼ぶなんてもっての他だ(誰も呼んでないって)。先生は実際に神戸女学院大学の教授なのだけど、どうも教授という呼び方はよそよそしくていけない。やっぱり先生の方がしっくりくる。あるいは漱石の「こころ」の主人公が先生を「先生」と呼んでいたのもこんな心境なのかもしれない。あちらは本当に先生であるから羨ましい限りである。

何てことを書いていたらまったく書評ではなくなってしまっているではないか。まあいいのだ。この本を読み始めてすぐに、僕にこの本の書評はできないと観念してしまっているのだから。それでもこの本を偶然このブログを見に来て下さった誰かに紹介せずにはおれないと、こうしてつらつらと書き綴っている次第である。

まことに、態度が悪くてすみません。

2006/12/23

僕とウェブとの付き合い方は(「ウェブ人間論」を読んで)

ウェブ人間論
ウェブ人間論
posted with amazlet on 06.12.24
梅田 望夫 平野 啓一郎
新潮社
売り上げランキング: 101

ウェブを活用し始めてから、僕の生活は以前よりはるかに豊かになった。以前までは、何か気になることがあっても、自分一人であれこれ考えるか、周囲のほん の数人と話してみるだけだった。それが、ウェブ上では誰かが僕の気になることについて何かしら意見を書いていてくれる。その意見について他の誰かがコメン トしたり、自分のブログで意見を書いている。それを見ていくことで、多くの人の意見がわかり、独善的にならないように自分の意見を構築する手掛りにできる。

RSSリーダーを活用することを覚えて、何十というブログ、百を越えるサイトをチェックすることができるようになった。毎日色々な話題で色々な意見が飛び 交い、新聞やテレビなど一方通行のメディアだけで情報を仕入れるよりも、世の中が動いていることを直接感じることができる。

そして、以前と今とで何が変わったって、読む本の量が圧倒的に増えた。これが一番大きな変化であって、一番大きな利益を僕にもたらしている。これまでも多く の本を読んできた。でもそれは本の存在を僕が認識しているものばかりで、知らない本との出会いは多くはなかった。それは書店に本が多過ぎて、どれを読んで良いの か決める手段を持たなかったことが原因だ。

ウェブで情報を集め始めてから、ウェブ上で話題になっている本、あるいは誰かが書評している本を読んでみるようになった。ウェブが僕に本を手に取るきっかけを与えてくれていると言える。そうやって読んだ本はもう何冊にも及ぶ。

そして今はその次の段階にいる。僕が本の紹介を始めたことだ。まだ少ないが、ここで紹介している本は誰かのブログで紹介されていたものもあるし、自分で選 んだものもある。読書を自分一人の中で終わらせるのではなく、その本から得たものを外に向けて発信することが、今度は僕に本を手に取るきっかけを与えてく れている。膨大な本の中から自分が書評を書けそうな話題の本を選んだり、しっかり勉強したい内容のものを選んで自分に書評を課すことで、読書がより豊か に、より有益になっている。そして自ずと読みたい本が見えてくるようになった。

ここまで書いてみて読み直してみると、すっかり書評ではなくなってしまっている。でも僕はこの本は、梅田さんと平野さんの二人の対談を通して自分とウェブとの付き合い方を考える本だと感じた。だからこれでいいのだ、ということにしておこう。

2006/12/22

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)
渡辺 千賀
朝日新聞社
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著者の渡辺千賀さんはブログ「On Off and Beyond」でも知られるアルファブロガーさん。いつもシリコンバレーから、Onは技術やベンチャー事業に関すること、Offは日常生活で感じることを、独特の視点で語ってくれる、僕の尊敬するブロガーさんの1人である。

シリコンバレーはマイクロソフト、アップル、グーグルなど、とてつもない技術者集団が誕生した場所であり、そして現在もまたそのような化け物会社に成長するかもしれない可能性を秘めたベンチャー企業が、生まれては消え、消えては生まれしている場所である。

僕はシリコンバレーに行ったことがない。だからシリコンバレーに対して具体的なイメージを持つこともできなかったし、これまで特にしようともしなかった。ところが本書を読んで、文字通り目玉が飛び出る思いだった。忙しい時に休憩のつもりで読み始めたら、止まらなくなってそのまま一気に最後まで読んでしまった。おかげでその日は徹夜の憂き目にあった。

シリコンバレーっていう場所は腕に自信のあるプログラマやソフトウェアの開発者が沢山集まった場所で、日々新しい技術が開発されていて、世界最先端の技術がそこで誕生しているのだ。そしてそんな技術者たちが一番評価されることができる、技術者天国とも言うべき場所だったのだ。

そんなシリコンバレーのライフスタイルは、次の4つに分類できるらしい。

1、雇用されず、個人で仕事を請ける「フリーランス」

2、自分の好きな場所に住むことを重視する「ライフスタイルワーカー」

3、働くときは働き、休むときは休む「チャンクワーカー」

4、複数のタイプの仕事を掛け持ちする「ポートフォリオワーカー」


どれも日本ではなかなかできそうにないワークスタイルだ。それなのに、中でもフリーランスは全体の15〜30%存在するらしい。そんな自由な生き方を選択できるなんて、まさに天国だ。僕もシリコンバレーに行こうかな、とうっとりしてしまう。

しかしながら、そこにあるのは天国ばかりではない。ある日突然解雇されたり、1箇所に留まって仕事する期間は長くて3年だったり、生活コストは馬鹿みたいに高かったりする。働いている期間の10%は職がないことを前提にしておいた方が安全だったりもする。その上、地ネズミやモグラに困らされたり、蛇に何匹も遭遇したりもするし、飼いネコがコヨーテに食べられることだってある。

そんな雨の日も含めてチャンスとリスクがいっぱいのシリコンバレーライフを楽しめそうな人、家庭菜園やアウトドアの好きな人、3度の飯よりプログラミング が好きな人、日本の技術者の待遇に不満を抱いている腕に自信のある若者は、シリコンバレーで腕試しを考えてみても良いのではなかろうか。

本書を読んで、固定概念を完膚なきまでに粉砕し、改めて自分の人生を設計し直してみると、新しい明日が見えてくる(かもしれない)。

情報のさばき方

情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント
外岡 秀俊
朝日新聞社
売り上げランキング: 2455



「ウェブ進化論」や「ウェブ人間論」の著者として、そして株式会社はてなの取締役として知られる梅田望夫さんによれば、これからのネットの世界は総表現社会であると言う。ブログという誰でも簡単にウェブ上で日記をつけたり、自分の意見を世の中に対して発言できるサービスが登場し、検索エンジンの進歩によってそれらの情報にたどり着くことができるようになった現在のネット社会をそう呼んでいる。

そんな中で、僕自身も「書けば誰かに伝わる」という思いでブログを始めた。ブログを始めて劇的に変わったのは、インプットする情報の量だった。インプットする情報が増え、毎日情報の洪水に押し流されそうな日々が続いている。どうやってこの情報をさばけば良いのかと考えていた矢先に、この本と書店で偶然出会った。

著者は朝日新聞東京本社の編集局長で、情報をさばくことにかけてはプロフェッショナルだ。著者は自身が先輩から学んだり、経験的に培った情報をさばくコツを、5つの基本原則としてまとめている。

基本原則その一、 情報力の基本はインデックス情報である。

基本原則その二、 次に重要な情報力の基本は自分の位置情報である。

基本原則その三、 膨大な情報を管理するコツは、情報管理の方法をできるだけ簡単にすることである。

基本原則その四、 情報は現場や現物にあたり、判断にあたっては常に現場におろして考える。

基本原則その五、 情報発信者の意図やメディアのからくりを知り、偏り(バイアス)を取り除く。


の5つである。

書かれていることのほとんどは、何だかの形で情報をさばく必要にある人にとっては新聞記者ならずとも役に立つ。

また、それと同時に新聞の在り方などについても勉強になる本である。

最も印象に残ったのは、第三章、1の、「わかりやすさ、正確さ、美しさ」の中で、これらの3つを正三角形の頂点に置いたとき、新聞はどこに位置するか、というところ。著者は、新聞は「わかりやすさ」に位置すると考えている。新聞は「正確さ」に位置しそうなものだが、「わかりやすさ」なのだ。これは、次のように説明できる。

新聞は大衆のためのメディアであって特定の専門家のためのものではない。そして書き手も専門家とは限らない。したがって「正確さ」は専門書に劣る。むしろ専門書なみに正確に書いても、理解できる人は限られてしまう。それならば多少「正確さ」を犠牲にしても、「わかりやすさ」を重視した方が良い。それが新聞の存在意義だ。

ということになる。

そして最後に、「IT社会と情報」というところで、これからの新聞の在り方についても述べられている。誰もが情報の発信者になれる現代にあって、新聞のようなメディアの価値はどこにあるのか。

その答は本書を読んでのお楽しみということにしておこう。

本書は新聞記者を目指す人、ブロガー、その他どんな形であれ情報と接して暮らす人の役に立つ本だと思う。

2006/12/20

ウェブ進化論



ウェブの世界の進歩は早い。2006年の頭に出たこの本が、同じ年の終わりにはもう既知の事しか書かれていない、古典になろうとしている。だからこの本の書評を書くのは今更という感じもするのだが、まだ読んだことのない人のために書いておくことにする。

今年に入ってから、「ウェブ2.0」という言葉をよく聞くようになった。知っている人に説明の必要はないが、「2.0」とはバージョン番号のことで、「1.0」から「2.0」へとウェブの在り方が大きく変化したということを表現した言葉である。

ここ数年間で、インターネットは確かに変化した。それは実感としてわかっている。ではどう変化したかというと、それを言葉で説明することは難しい。昔は情報の発信者と受信者、あるいはサービスの提供者と利用者がほぼ明確に区別されていて、それぞれ前者が少数、後者が多数だった。これは、1対Nのコミュニケーションである。

しかし最近はこれまで情報やサービスの受け手だった人達も情報を発信できるようになってきた。ブログの登場、mixiやMySpaceなどSNSと呼ばれるサービスの登場、CGMという消費者参加型メディアの登場などがその原因として挙げられる。これはN対Nのコミュニケーションと表現される。そしてグーグルが発展させた検索エンジンによって、あらゆる情報へ検索エンジン経由でアクセスできるようになり、知の再編成が起きてしまった。検索エンジンが情報の在り方に革命を起こしたとも言える。

本書では、これらの変化について具体例を挙げながら、シリコンバレーで暮らす著者の実感を踏まえつつ、幾分楽観的にウェブの今までとこれからについて書かれている。(悪く言えば良いことしか書かれていない。)そして本書を読めば、今ウェブの世界に何が起きているのかを知ることができるだろう。本書はウェブに精通した人には分かり切ったことしか書かれていないかもしれないし、(多くの悪い面を知っていて)著者とは違うイメージを抱いている人もいるだろう。

本書はウェブの初心者にお勧めである。実際にウェブをどう活用すれば良いのかは、良い面、悪い面を体験しつつ自分で慣れていくしかないのだが、本書はその案内役になってくれるだろう。ただし本はこちら側のもの。インターネットはあちら側のものである。だから案内役は入り口までしか案内できない。そこから先は自分の力で漕ぎ出していかなければならない。

下流喰い―消費者金融の実態



僕が高校生の時分だっただろうか、消費者金融のCMに新人のアイドルがよく出演するようになった。僕の父はそれを見ながら、「消費者金融のCMに出たら彼女らのイメージが悪くなって売れなくなるんじゃないか」と言った。僕も同感だった。

しかしながら、多くの人が知っているように彼女らはその後大ブレイクし、我々の予想は外れた。そして、それと同時に消費者金融は巨大化を続けた。それは消 費者金融がCMによるイメージ戦略に成功したということであり、また消費者金融によって生活が立ち行かなくなった人を多く生み出したことも意味している。

なぜ彼等は消費者金融を利用してしまうのか。なぜ返せなくなるまで借り続けてしまうのか。その理由は消費者金融の巧妙なビジネスモデルにあった。現在グ レーゾーン金利が問題になっているが、本書ではグレーゾーン金利が存在する理由、そしてグレーゾーンによっていつまで返済しても元金が減らないビジネスモ デルのシステムを説明している。著者はこのビジネスモデルを、「悪魔的ビジネスモデル」と名付け、利用者、潜在的利用者に警告している。

現代の消費者金融の実体、そしてそれに苦しむ人達の実体を自ら取材して詳細に描いた一冊。

また、著者は金融ジャーナリストで金融ウォッチャーとしての実力には定評があるとのことだが、本書からもその実力を伺い知ることができる。不謹慎な気もするが、とても面白かった。

経済学を学ぶ



本書は経済学の入門として、主に社会現象における経済学的なものの見方というものを教えてくれる。経済学的に社会の動きを見ることは、ただニュースを額面通りに受けとることよりも深く世の中の流れを見ることができ、次に自分がどう判断すれば良いかの指針を与えてくれる。

また、本書では市場経済の発展のごく簡単な歴史、社会主義的な経済の問題点などについても触れられている。

中でも僕が興味を持ったのは、「市場経済≠金銭至上主義」ということがはっきりと述べられている点である。何も経済学は金銭のからむことにしか適用できないわけではない。むしろ金銭の流れだけを見ていたのでは本当の世の中の動きは見えない。このことが、かえって経済学を多少勉強したことがある人に誤解されているということだ。そして金銭に換算できるものしか説明できない経済学に限界を感じてしまうらしいのだが、本書を読めばそれが間違いであることがわかる。

経済学は敷居が高そうで、興味があるけど躊躇している、あるいは経済学なんて信用しない、という人にぜひ読んでいただきたいお勧めの本である。

2006/12/19

アルファ日誌ブックレビュー開設

先日、ブログ「情報考学 Passion For The Future」で知られる橋本大也さんの書評集「情報考学—WEB時代の羅針盤213冊」を購入した。


まだあまり読んでいないのだが、まえがきにご本人の「読んで書く 読・書スタイル」ということについて触れてある。本を読むこと、そしてその本についてブログに書くこと。これを続けることで本を読むことがいっそう楽しくなったと言う。それは読みっぱなしの読書スタイルに比べてずっと本との関わりが深いとある。

この言葉に影響されて、自分でも書評というのをしてみることにした。本を読み、それについて書く。それによって自分の読書ライフがこれまで以上に楽しくなること、そしてこのブログを読んで下さった誰かの本選びの参考になることを期待して、書評を始めることにする。