突破力! 仕事の「壁」は、こうして破れ
この本は読んでいて、まことに気持よくて爽快だった。この場合「気持よい」と「爽快」はほとんど同じ意味なのだけど、敢えて重ねよう。気持よくて爽快な本だった。
本書は外資系コンサルティングファーム「ボストンコンサルティンググループ」の代表取締役社長を勤めた堀紘一氏が、雑誌で連載していた悩み相談を加筆、修正したもの。二十代、三十代のビジネスパーソンたちの仕事や人生における「壁」を突破するための助言、激励、喝を質問のタイプ別に掲載している。
本書は「こういう場合はこうせよ」というタイプのハウツー本として読む方法もある。しかし、本書の魅力はむしろ数々の助言から著者の持つ「突破力」を学ぶことにあるだろう。著者の前ではほとんどの問題がほんの小さくて些細な問題のように見えてくる。もちろん相談している本人にとっては極めて深刻かつ重大な問題なのだけど、ほとんどの場合、今置かれている状態から最小の努力をもって抜け出そうとしているために、どうして良いかわからなくてクヨクヨ悩んでいるように見える。これは僕もしばしば陥りがちな状況だ。
しかしながら、もっと視野を広げてもっと深く考えてみれば、自と解決方法が見えてくるもののようだ。それは、時には本人にとっては英断と呼べるような決定を下さなければいけないかもしれない。でも多分、そんな英断を一度下すことができて、しかもその後もその勇気と視野の広さを保ったまま生きていくことができれば、その時の英断なんて英断と呼べる程のものではなくなっているのかもしれない。
ともかく、本書ではビジネスパーソンが一度は陥りそうな困難に対して、著者がそんなものこうすればいいんだよ、とばかりにスパスパ裁いて片付けてしまっている。しかもすごいのは、「あの時はああ言ったのに、今回は違うことを言っている」といった矛盾がないことだ。著者が自らの人生を通して築いてきた信念に従って答えているからだろう。直感的に、「この人は信頼できる」と思った。
仕事や職場での人間関係が上手くいかないのだけど、どうして良いのかわからなくて悩んでいる、という人は、一度本書を手に取ってみると良いだろう。